セルボ・モ-ド出会い編

周子にはいくつかの夢があります。
その中に、いつか猫を飼いたいという夢がありました。
周子の実家は県営の団地だった為、ずっと猫は飼えませんでした。
高校卒業で、すぐ家を出ていった後もアパ-ト暮らしが続きました。
しかも一ケ所にずっと住み続けるというのではなくて、更新のたびに引っ越しをしてました。
何故か更新の時期になると引っ越しをしなければ、ならない事情が次々におこった為です。
最悪なのは、更新して、一ヶ月後に引っ越しをしなければならない時もあって、あの時は金銭的に非常につらいものがありました。
そんな周子ですから、猫を飼うなど夢のまた夢。
しかも当時はただフリ-タ-だった為、朝から晩までバイトに明け暮れ、休みは一月に一回、あるかないかのような生活でした。自分一人ですらやっとやっと生活出来るような状態でしたから、猫など飼っている場合ではありませんでした。
そんな生活を続けていた周子がある日突然の就職。
周子も驚いたが、回りのみんなも驚いた。 就職して、安定した生活が得られてきた時、忘れていた夢を思い出しました。
猫を飼うという夢です。
周子は運がいいのか悪いのか、自分が叶えたかった夢は、ほとんどかなってました。
結果的にかなわなかったものもありますが、自分では納得出来るとこまでやったので、良しとしよう。
そして最後まで残っていた叶えたかった夢。それが猫を飼うことでした。
そしてその夢は、ある日突然叶ったのです。

ある日、勤めていた職場でこんな話しが出ました。
住んでいるマンションに野良猫が住み着いて、みんなで餌付けをしている。野良のままでは可哀想なので、誰か飼ってくれる人はいないだろうか。
周子はすぐさま飛びついて、早速猫を見に行ってきました。
しかし長年野良生活をしていた猫は、人間嫌いで、少しも懐いてはくれません。
いくら可愛い猫でも、これでは、と思い悩んでいた周子に吉報が。
猫を譲ってくれるという人があらわれたのです。
生まれてから四か月目の子猫、トイレなどのしつけも済んでいる、初めて飼うならこっちがいい、と言われました。
しかしその猫を飼うには、条件がありました。
姉妹ではないが、とても仲がいい猫がいる。引き離すのは、可哀想なので、二匹貰ってくれるなら譲ってもいい。
それが条件でした。
仕事柄夜勤などもあるので、複数飼う気は最初からありました。けれどなにぶん猫を飼ったことがないので、取りあえず一匹飼ってみて、慣れてきてから二匹飼おうと思っていました。 少し考えさせて欲しい、と元の飼い主さんに伝え、周子は次の休みに図書館に向かいました。
そこで周子はありとあらゆる猫の本を読みました。
その中に、「複数猫を飼う気があるのなら、最初から複数で飼いましょう。そうしないと、猫関係の出来ない猫になります」その一文で周子の心は決まりました。

さて、猫を飼う話しも本決まりとなり、周子は休みを利用して、猫グッズを買いに行った。
猫砂、猫缶、猫のおむつ。猫のおもちゃ。
準備は着々と進められ、いよいよおむかいの日。
周子は友達の車で練馬の飼い主さん宅にお邪魔した。
ドアをあけてびっくり。
猫、また猫。
そこでは猫を7か8匹飼っていた。
そして周子が貰う予定の猫は、別室で周子を待っていた。丁度御飯タイムで、二匹は、ばくばくと御飯を食べていた。
「か、可愛い〜♪」
それがセルボを見た周子の感想である。
そしてその隣にいた。モ-ド。
当時モ-ちゃんはがりがりに痩せていて、目ばかり大きかった。
「なんだ、この子。目ばっかり大きくて眼鏡猿みたいな子だな」
それがモ-ドを見た時の感想でした。
そしてにこにこ顔の飼い主さん。
今さら一匹だけでいいです、とも言えず、結局二匹貰うこととなりましたが、帰る寸前に周子を呼び止める元飼い主さん。
「名前を決めていって」
周子はたじろいだ。
実は、名前は決めて逢ったのだが、それは影虎。
おす猫用でした。
謙信大好きの周子が二匹あわせて、その名前をつけようと思っていたのだ。しかし目の前にいるのは、二匹のめす猫。
30秒程考えた後で、周子は真っ白な紙に二匹の名前を書いた。
「セルボ・モ-ド」
それは、当時周子が乗っていた車だった。
二匹あわせて一つの名前。
その時の周子の頭の中には、これしか思い浮かばなかったのである。


セルボ・モ-ド初夜編
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二匹の猫をつれて無事大宮のアパ-トまで辿り着いた周子は、猫達の為に借りてきたゲ-ジを組み立てた。
それからすかさず、餌とお水の用意。
これで用意は万端である。
今夜は猫と一緒に寝ようとして、猫の部屋に布団を設置。
ドラマで見られるみたいに、猫が布団に入ってくるのをわくわくしてまっていた。 ところが五分たっても、十分たっても、猫は布団に入ってこない。
何をしているんだろうと、ゲ-ジの方を見ると、元の飼い主さんから貰ってきたバスタオルに二匹でくるまっていた。
そのバスタオルは、二匹の猫がずっと向こうの家で使っていたものらしい。
前の家が恋しいのか、二匹は、互いの体を寄せあって、バスタオルにくるまっている。
泣き声一つあげるどころか水すら飲まない。
さすがの周子の少し不安になってきた。
まだ子猫の猫達は、これでも元気に育ってくれるだろうか。
一抹の不安を抱えたまま、寂しい初夜はふけていったのである。

当時、周子は朝の五時半起きだった。
時計よりも先に目がさめることはない。
しかし初夜の朝、周子は目覚まし時計よりも早く目がさめた。
当然窓の外は暗い。
なんでこんなに早く目がさめたんだろう。
ぼんやり考える周子の腹の上を、何かの物体が駆け抜けていく。
しかも重い。そしてばたっどたっ。
聞いたこともない物音が部屋の中からしている。
何ごと!?
目覚めた周子が目にしたのは、元気に走る回る二匹の姿があったのだ。
以来、周子宅の朝は、猫の走り回る音から始まるといっても、過言ではない。


セルボ脱走編

可愛い猫達もなんとか周子になつき、楽しい猫ライフを楽しんでいた周子に事件が!? その日、周子は仕事から帰ってきて、猫達の部屋の掃除をしたのである。
窓は開けて、網戸は閉めて。そして掃除も終わり、猫の匂いが隠っていたので、そのまま窓を開けて、周子は別室に。しばらくそのままにすること30分。
そろそろいいだろうと思って猫の部屋にいって見ると、セルボの姿がない。部屋のまん中で、モ-ドが一人でぽつんと座っている。
あれ、おかしい。
しかし押し入れに入ってしまうことがあるからな、と思いながら、窓を閉めに行くと、なんと網戸があいているではないか。周子が閉め忘れたか、猫が開けたか。どちらにしろセルボが出ていった確率はかなりある。
早速部屋の中を探す周子。
セルボの姿はない。
外に出ていった!!
自慢じゃないが、うちの猫は家猫で一度もお外にいったことがない。
外に何があるのか知らないセルボ。
近所の野良に弄られては一大事、車の通りも多い。
普段野良猫がよく集まる場所からスタ-トをし、周子は必死になって、セルボを探した。
しかし猫が隠れている場所が人間に分かる筈もない。
そこで周子は、次の作戦をとった。それは名付けてモンプチ大作戦!!
セルボはモンプチが好きである。
それを窓のところにおいてみたりした。
しかし効果はない。
思いあまってモ-ドに聞いてみたりもした。
「セルボ、何処にいったか聞いてない?」
勿論返事などある筈もない。
人間は究極な状態に陥ると、おかしなこともおかしいとは思わずしてしまうものである。
そして次に周子がとった行動は、なんと洗濯である。
洗濯物がたまっていたので、取りあえず洗濯しようとベランダに出た。これがヒット!!
洗濯をする周子の足下から「にゃ-」と声がする。
見ると真っ白なセルボが、窓枠に前足をのっけて泣いていた。
思いきり抱き締めたのは、いうまでもない話し。
しかし脱走したのはいいけど、どうやって部屋に入ったらいいのか分からなくなっていた模様。可愛いやつだ。



セルボ病気編


それはある朝の出来事である。
いつものように御飯とトイレの砂を片付けていた。
するとトイレの中になにやら赤いものが!? これはもしかして、人間で言うところの血尿では!?
震える周子はなんとかトイレを片づけた。
するとすかさずトイレに向かってセルボがダッシュ。まるでうんちをするように力んでおしっこをしている。覗き込むとまさしく血尿。
このままではいかん。しかしその日は日勤。
やもなく仕事場に出てから、朝からうちの猫が血尿を出したと、職場中に触れ回った。とても心配である。早くなんとかしなければ。
見兼ねた上司が、「あんたもう帰っていいわよ」と有り難い一言。
もちろん即効帰って、獣医さんに駆け込んだ。
膀胱炎との診断。内服も人間と同じでいいと分かり一安心で家に帰ったのである。
以来、膀胱炎程度では獣医さんにはいきません。
周子が自ら調合してます。
人間と全く同じ薬でいいので、楽々です。しかし分量は人間の二十分の一。
調合する時は間違えないようにしましょう。
その病気の恐怖の始まりは膀胱炎と周子があなどったことから始まった。
いつものように血尿を出すセルボ。(膀胱炎は、人間と同じで一度かかるとなおってもくり返すことが多いのだ)
例によって、自分で調合する周子。
しかし、その時は様子がちとおかしい。
いつもなら薬を始めて三日目くらいには、血尿が消える筈なのに、今回は消えない。そのまま様子をみること一週間。血尿はとまらない。
慌てて獣医さんに駆け込む周子。
可哀相に、無理矢理尿を取られるセルボ。
その尿を検査した結果、なんと尿管結石にかかっていたことが判明した。(人間とは少し違う)
そっさく何やら筋肉注射を打たれ、100ccもの点滴を打たれるセルボ
。 嫌がってママのとこに逃げてきたりもするが、それは無駄な抵抗である。
点滴しながら、恨めしそうにママを見る周子。
我慢、我慢よ、セルボちゃん。
そう心の中でくり返す周子。
点滴を三日ばかりくり返した後、セルボは全快した。
その時、ひさしぶりに綺麗なおしっこをしたセルボちゃん。ママはそのおしっこすら飲んでもかまわないと思いましたよ。
以来、膀胱炎と思ってあなどるなかれ。
これが周子の信条となりました。
ちなみに三日の獣医さん通いで、一万円程かかった。
全額負担は厳しいです。



セルボ・モ-ド監禁編



知る人ぞ知るの話しではあるが、周子にはとてつもない悪友が一人いる。
猫を飼いはじめて間もない頃、その友達、Tくんが家にやってきた。
当然可愛い猫のお披露目。
しかしかれの本来の目的は、周子宅のゲ-ム機を貸してほしいとのこと。
その時持って来たゲ-ムがなんだったか忘れてしまったが、このゲ-ムがやりたいから一晩ゲ-ム機をかしてほしいという。
実はこのTくん、無類のゲ-マ-。
しかし家にはゲ-ム機がなく、いつも周子宅でゲ-ムをしていたのである。
周子は、猫の世話をするのを条件にして、一晩ゲ-ム機を貸してあげた。
翌朝、貫徹でゲ-ムをしていたTくん。
朝起きたばかりの周子と体面した。
しかしそこに頼んでおいた猫の姿がない。
「猫はどうしたの?」
という問いにかれは平然と答えた。
「ああ、風呂場。あいつらうるさくてさ-、人のゲ-ムの邪魔ばっかするんだよ。だから風呂場に入れたよ。安心してくれ。そこにトイレも餌箱もいれてあるから。それでも風呂場で大騒ぎしやがってよ-。猫って夜行性だろ。風呂場の電気つけてやったら、少し静かになったよ。臭かったから、風呂場の窓あけてあるから」
なんてこと!!
報告を聞いて、周子は風呂場に飛んでいった。
すると水のないふろおけの中で、二匹は寒そうにないていた。しかも窓は全開。逃げ出さなくてよかったです。
以来、Tくんにゲ-ム機を貸すことはなくなりました。
当然猫達もTくんがくると、さっさと逃げていくのあった。
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