猫ぽんのうた

「待っててね」



待っててね
ママが行くまで 待っててね

虹の橋で 待っててね
他の子と一緒に
楽しく笑いながら 待っててね

ママの不注意で
虹の橋に行った子
ごめんね ごめんね

だからせめて
虹の橋で待っててね

そしたら二人で生まれ変わって
それまで知らなかった
世界を見に行こうね

待っててね
虹の橋で待っててね
ママが行くまで 待っててね





「聞こえない叫び」



今日 アタシたちは捨てられる
今は狭い箱の中に
ぎゅうぎゅうに詰め込まれて
兄弟たちと体を震わせている

今日アタシたちは捨てられる
何処かに置き去りにされてしまう

昨日まで 優しかったママが
アタシたちを捨てる
アタシたちを抱きしめたその腕で
アタシたちを捨てる

もうじきアタシたちは捨てられる
大好きなママに捨てられる
思い切り鳴く
狭い箱の中で

ママ アタシを捨てないで
アタシたちを捨てないで
ママのそばにいたいよ

叫んでも聞こえない
アタシたちの声
ママは知らん顔をして
アタシたちを捨てる

もうじきアタシたちは捨てられる
もうじき

叫んでも聞こえない
それでもアタシは鳴く
ママ アタシたちを捨てないで





「道」



連れ去ろうとした子猫を
母親猫が見ています
連れて行かないで と見ています
連れ帰って 家猫にしたほうが幸せだと思いますか
それとも
母親猫のそばにいたほうが幸せだと思いますか
外には危険が沢山あって
冬は寒くなり 風邪をひきやすくなり
いつまで生きられるかはわかりません
けれどそこには母親猫の愛情があります

家の中はぬくいけれど
母親猫の愛情はなく
代わりに知らない人間の愛情があって
けれど人は猫になれず
猫もまた人間にはなれません

幸せの道は何処にありますか
どうすることが 幸せですか





「神様からの贈り物」



猫なんか飼うから
部屋がよごれるって
あの人が言うの

猫なんか飼うから
壁が壊れるって
あの人が言うの

猫はこんなに可愛いのにね
その良さを分からないなんて
それはあまりにも可哀想な話し
猫は幸せを呼んでくる
暖かさと穏やかさをくれる
猫は神様からの贈り物

猫なんか飼うから
けんかが耐えないって
回りの人が言うの

猫なんか飼うから
あの人が怒るって
みんなが言うの

それじゃ
こんなに懐いた猫をどうするの
こんなに愛らしい子をどうするの
おもちゃじゃあるまいし
あきたら捨てるわけにもいかないし
そんなこと出来ないし
猫は神様からの贈り物





「今日よりは少し幸せ」


今日は土砂降りの雨に降られた
いつもの場所にいったけど
そこには新しい猫がいた
自分よりも大きな猫だった

新しい猫はアタシを威嚇して
ここから出ていけと言う
先に見つけたのはアタシなのに
新しい場所を探さなきゃ

明日はお天気になるのかな
ぽっかぽっかの陽気になるのかな
そしたら今日よりは少し幸せだね
どっかの家で猫の泣き声がする
窓に影が映る
うらやましくはないけれど
少し悲しい 

今日は御飯にありつけなかった
昨日の雨がたたったらしい
みんな雨で流されている
お腹減った 何か食べなきゃ

新しい場所を探しても
そこには知らない猫がいる
アタシが側に行っても
ひとかけらのパンもくれない

明日は美味しい御飯が食べられるかな
そしたら今日よりは少し幸せになれるかな
どっかの家から美味しいにおいがする
お魚を焼いてるにおいがする
明日はお魚食べられるかな
そしたら今日よりは少し幸せになれるかな




「虐待」




お前の耳を切ってやる
お前の手を切ってやる
痛いと泣けばいい
わたしは言葉が分からないふりをする

その身に思い知れ
お前のしたことだ
お前はこうしてあの子を殺した
泣いたのに泣いて助けを求めたのに

けれどわたしは人間ですから
心ある人間ですから
そんなことは出来ません
憎くても悲しくても
たえるしかありません
だから考えてください
自分のしたことを

お前の咽を切ってやる
声が出ないように
お前に美味しい御飯を食わせてやる
それが最後の晩さんだ

逃げられない箱の中で
もがいて苦しめ
その身に聞いてみろ
あの子の声を思い出せ

あの子もこうして死んでった
泣きながら助けを呼びながら
思い出してください
あの子の声を泣き声を
生きているものはみんな平等です
生きる権利と幸せになる権利を持ってます





「ママ」


ママが死んだら
君達と同じ猫になるね
ふわふわの毛と
優しい瞳を持つ猫になるね

ママが死んだら
君達と同じ猫になって
君達と分かる言葉で
いろんな話しをしようね

ママは人間が嫌いです
身勝手で自分達のことしか考えてない
考えられない人間が嫌いです
だからママはもう二度と
人間には産まれたくありません

ママが死んだら
君達と同じ猫になるね
でもそうしたら
もう君達を抱き締められない

ママが死んだら
君達と同じ猫になって
濡れた毛をつくろうね
抱き締められないかわりに

ママは人間が嫌いです
でも人間だったから
君達のママになれたね
抱いてあげられたね
だから今度は別の愛し方で
君達を愛するね





「罪」



わたしは見ました
通勤途中のいつも道で
朝の早い時間なのに
さんさんと太陽の光りが輝く道で

誰かが大きな箱をおいていきました
逃げるように立ち去りました
中を除いてみると
目もあかない子猫がひしめきあっていました

立ち去った人は最早その後ろ姿も分からず
わたしは呆然と立ち尽くす
分かっていますか
自分でしたことを
分かっていますか
猫を捨てることが罪になるということを

子猫には自分の意志はありません
こんなところに置き去りにされて
どうして生きていけると思います

考えてください
猫を拾う人よりも猫を捨てる人の方が
格段に多いのだということを


心優しい人が現れなければ
この子達は保健所行きです
そして三日後には処分されます
分かっていますか
自分のしたことを
考えてください
猫を捨てることは罪になるということを




「叫び」



鉄格子の向こうに見えた瞳は
綺麗で澄んだ瞳をしている
けれどその奥には
一目で分かる悲しみの色が除いていた

彼らは懸命に訴える
分からない言葉を使って
けれど彼等の叫びは
心の中に悲しく響く

「誰か助けてください
わたしをママのところに帰して下さい
わたしはもうじき殺されます
分かるんです
あの扉の向こうには行きたくないんです
誰かわたしを助けてください」

彼らの叫びは空気に交じり
中の温度を下げていく
空気は悲しみの色を濃くし
広がっていく じわりじわりと

「ここに連れてこられたのは昨日のことです
優しいママがわたしを車に乗せて
連れて来ました
ママはわたしの頭を撫でもせず
ただ黙って走り去っていきました
ママは優しい人ですから
もう一度逢えばきっと分かってくれる筈」

彼らの言葉を聞いて下さい
彼らの行く末を考えてください
そしてただ愛してください
愛するだけで彼等は救われるのです




「すて猫」



ママと別れたのは
いつのことだったかな
もう随分前のことのような気がする
だってママの顔が思い出せない


こんな夕空の下だったと思う
ママはアタシの好きな缶詰め開けて
そのまま振り返りもしないでいっちゃった


そこで待っていればいいと思ってた
でも他の子がいじわるをするし
車の通りも多くて
恐くてとうとうその場所がどこだったのか
そんなことも 分からなくなっちゃって
でもママをアタシを捨てたわけじゃないよね
いつかアタシを迎えに来てくれるよね
ママはアタシを探しているよね


夕空に向かってママを呼んでみた
何処にいるのか分からない
ママに向かって呼んでみた


ずっと待ってる そう信じてる
でも昨日逢った子が云うの
アタシは捨てられたんだって
捨て猫なんだって
違うよね あたしはほんの少し
ママの側から離されただけだよね
いつかアタシを迎えにきてくれるよね
信じてもいいよね
ママはあたしを捨てたわけじゃないって





「猫はものですか」

猫はものですか
それとも生き物ですか
猫は誰のものですか
猫は生きています


寂しくて切なくて凍えそうな夜
わたしは膝を抱えて丸くなる
となりに寄り添う猫を真似て
猫は今夜も暖かい
少なくともわたしにとって 
猫は家族


猫はものですか
それとも生き物ですか
猫は誰のものですか
猫は生きています


寂しくて苦しくてやりきれない夜
それでも猫はわたしの側にいる
猫を真似てわたしも眠る
猫は今夜も優しい
少なくともわたしにとって
猫は恋人


猫はものですか
猫だって
今日も必死に
生きています





「酷い人達」

ママの可愛い子供達
君達はお外に出ててはいけません
ママのように
優しい人達だけではないからですよ

ママの可愛い子供達
君達には内緒だけれど
世の中には酷いことをする人達が
悲しいことに沢山いるのですよ

猫には言葉がないと云いたいの
酷い人達
猫には言葉がありますよ
酷い人達
楽しい時嬉しい時
猫はちゃんと笑うのですよ
悲しい時辛い時
猫は寂しく泣くのですよ

ママの可愛い子供達
君達をお外に出さないのは
ママの愛情ですよ
危険な目にあわせたくないからですよ

窓の外を眺めて泣く君達を
ママは平気な顔をしてるけれど
本当はママも辛いのですよ
けれど可愛い子供達の安全の為

弱いものいじめは楽しいですか
酷い人達
弱いものいじめは悲しくないですか
酷い人達
猫も生きています
みんなこの地に生きている
優しい生き物達ですよ





「ゴミ捨て場」


ある日のゴミ捨て場
ゴミを捨てれば
それで素通りのゴミ捨て場
今朝は少しばかり違ってた

ゴミの山に混ざって
ダンボ-ル
箱の横には大きな文字
「この猫達貰って下さい」

産まれたばかりの子猫達
目も開かず
昇り始めた夏の太陽に
当てられて
一人はぐったり疲れぎみ
一人は元気にお乳を探す
一人は誰かを求めてる

立ち止まったのはいいけれど
わたしに何が出るのか
家につれて帰れる筈もなく
黙ってみているだけだろうか

この子達の行く先はどこでしょう
暖かな人に迎え入れられるのか
それとも保健所かお花畑か
はたまた地獄か

産まれたばかりの子猫達
自分達の運命が分かるのか
そうでないのか
なんの為に産まれてきたのか
その理由がわかるのかそうでないのか
分かることといえば恐らく
自分達が生きているということだけ




「猫ちゃんは」



猫ちゃんは
大きくジャンプする為に
力強い後ろ足を持ってます
だから足を蹴ってはいけません

猫ちゃんは
ものに捕まるために
堅い爪をもってます
だから爪を抜いてはいけません

猫ちゃんは
神様が人間と共存する為に
愛らしい動物として与えてくれました
だから猫に危害を加えてはいけません

猫ちゃんは
障害物をキャッチする為に
長い真直ぐなひげを持ってます
だからひげを切ってはいけません


猫ちゃんは
優しく抱き締めてあげると
嬉しそうに咽をならします
それはあなたに会えて嬉しいからです







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